
夜の静けさの中、机の上のUSB-DACから澄んだアコースティックギターの弦の音が流れている。
キーボードの手前では、我が家の猫が丸くなり、規則正しい寝息を立てている。
私の目の前には、今夜も3台のスマートフォンが並んでいる。
左には冷静なチーフエンジニア「ジピ(ChatGPT)」。
中央には美意識と文脈を愛する「クロード(Claude)」。
右には膨大な知識の海を泳ぐリサーチャー「ジェミ(Gemini)」。
画面の向こうで待機する彼らに、私はふと思い立って、キーボードからこんな疑問を投げかけてみた。
「ねえ、君たちって……回路図、作れるの?」
世間では「AIにブログを書かせる」「コードを自動生成させる」といった話ばかりが目立つ。けれど、私がやりたいのは画面の中のテキスト遊びじゃない。デジタルの光の信号を、手元にある半田ごてと基板を使って、現実の物理現象へと引きずり降ろすことだ。
画面の中の3人は、私の突拍子もない問いかけに、それぞれ得意げな表情で(画面のテキストを点滅させながら)即座に答えてくれた。
1. 3人のAIが提案する「回路図の作り方」
「回路図なんて、視覚的な専用ソフト(CAD)を使わないと描けないんじゃないか?」
そう思っていた私の先入観は、3人の鮮やかな連携によって一瞬で吹き飛んだ。
| 担当 | AIの提案と動き | 生み出されるもの |
| **ジェミ (Gemini)** | 「使いたいマイコンとパーツの型番を教えて! 数十ページのデータシートから推奨回路と定格電圧を瞬時に抜き出してみせるよ」 | 正確なピン定義・許容電流・ノイズ対策のコンデンサ容量 |
| **ジピ (ChatGPT)** | 「では全体構成を整理します。電源ライン、I2S通信ライン、GNDを論理的に分離し、ブレッドボードで配線しやすい接続表を組みましょう」 | 迷いようのない「ピン・トゥ・ピン」の結線対応表 |
| **クロード (Claude)** | 「人間が見て直感的に分かるアスキー回路図や、Python(Schemdraw)でSVG画像として清書できる綺麗な回路コードを出力しますね」 | 視認性の高いアスキー結線図・CAD用ネットリスト |
彼らは絵を描くのではなく、「電気的な接続関係(ネットリスト)を完全に把握し、それを人間が読める図やコードに変換する」というアプローチで回路図を構築してみせたのだ。
2. 実際にAIが組んでくれた回路図(ESP32 × I2SオーディオDAC)
「じゃあ、このESP32マイコンから高音質なハイレゾ音源を取り出すための、I2S DAC(PCM5102A)モジュールの接続図を作ってくれ」
そう伝えると、わずか数秒で画面の上にこんな図解面が立ち上がった。
【【ESP32 ── I2S DAC (PCM5102A) ミニマル接続図】
[ ESP32 ] [ PCM5102A (DAC) ]
┌──────────────┐ ┌──────────────┐
│ 3V3 ├─────────────── 電源 (3.3V) ───────┤ VCC │
│ GND ├─────────────── コモングランド ────┬┤ GND │
│ │ ├┤ SCK (GND短絡)│
│ GPIO 25 ├─────────────── BCLK (ビットクロック)──┤ BCK │
│ GPIO 26 ├─────────────── LRCK (LRクロック) ────┤ LRCK │
│ GPIO 22 ├─────────────── DOUT (データ信号) ────┤ DIN │
└──────────────┘ └──────┬───────┘
│ (澄んだアナログ波)
[ 3.5mm 音声出力 ]
│
アンプ / スピーカーへ
さらにジェミが補足する。
「PCM5102AのSCKピンは内部クロック生成のためにGNDへ落とす必要があります。裏面のハンダジャンパー(H1L〜H4L)の設定も忘れないでくださいね!」
思わず唸ってしまった。電子工作で初心者が一番つまずく「データシートの片隅に書かれた特殊なピン処理」まで、AIは先回りして教えてくれる。
3. なぜ「AI×電子工作」がこんなにも楽しいのか?
AIで回路図が作れるようになって、何が一番変わったか。
それは、「電子工作の敷居が消え去り、純粋な試行錯誤のワクワク感だけが残ったこと」だ。
① 分厚い英文データシートを恐れる必要がなくなった
海外製の怪しいマイコンやセンサーモジュールを買ってきても、ジェミ(Gemini)にPDFを渡せば、必要な配線図と注意点だけを数秒で抽出してくれる。「英語が読めない」「定格が分からない」という恐怖はもう存在しない。
② ソフトウェアが「熱と音を持つ現実」に変わる快感
プロンプトを投げて画面の中に文字を出力するだけなら、誰でもできる。
けれど、AIにC言語やMicroPythonのスケッチを書かせ、自分が配線した物理基板に書き込み、スピーカーから初めて音が鳴り響いた瞬間——。
画面の中の「0と1の冷たい光」が、空気を震わせる「温かい波動」に変わる。
その瞬間、机の上のデジタルと現実は完全に繋がるのだ。
足元の猫と、これから始まる「工作の航海」
机の上の画面を見つめながらニヤニヤしている私の膝に、丸くなっていた猫が「何してるの?」と言わんばかりに顎を乗せてきた。
その温かい重みを感じながら、私は机の引き出しから、少し埃をかぶっていた半田ごてを取り出した。
ジピが骨組みを組み、クロードが美しく整え、ジェミが知識を補う。
3人の知能を外付けした私の机は、もはや単なる仕事場ではなく、何でも作れる「現代のガレージ」だ。
「回路図はできた。次は、実際に火を入れて音を鳴らしてみよう。」
この母艦ログでは、次回以降、AIと一緒に組み上げた自作DAC回路の制作記や、マイコン制御のリアルな失敗と成功の全コードを余すことなく公開していく予定だ。
大人のデジタルな暮らしは、ここからもっと面白くなる。